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私たちのくらしを支える外航海運 ~衣/食/住/エネルギー~
~ 衣 ~
ふだん私たちが着ている衣料品も、その原料のほとんどは外国から船で輸入されたものです。衣服は綿花、羊毛、麻、絹などの天然繊維からつくられるものと、ポリエステル、アクリル、ナイロンなどのように化学的、人工的につくられる合成繊維によってつくられるものとがあります。
日本では天然繊維のうち綿花、羊毛、麻は気象条件が合わないなどの理由でほとんど生産されていません。着物などの絹製品の原料となる生糸は、戦前は世界一の生産量を誇っていましたが、現在では大きく減少しています。
合成繊維は天然繊維に比べ、生産できる地域が限定されたり、品質がかたよることもなく、工場で計画的に大量生産することができる点や、用途に合わせてさまざまな性質のものをつくれるという大きな特徴があります。最近のカラフルでユニークな性質をもった衣料品は、合成繊維ならではの製品でしょう。こうした合成繊維のほとんどが石油からつくられます。日本は石油のほぼ100%を輸入に頼っていますから、合成繊維の原料も運んでくることが必要になるのです。
これら衣服の原料となる天然繊維、合成繊維のほとんどすべてが船で運ばれています。綿花はアメリカ、オーストラリアなどから、麻は中国やフィリピンなどから、コンテナ船などで運ばれています。これらは軽くてかさばる貨物ですが、こうした体積のある貨物の運搬も船の得意とする分野です。石油はおもに中東地域から大型タンカーで運ばれています。このほかにも外国のバッグなどの高級ブランド品や、途上国で製品化された安価な衣料品なども外航貨物船でたくさん運ばれ、お店のショー・ウィンドーを飾っています。

~ 食 ~
私たちの毎日の食生活を支える食品の多くも輸入にたより、そのほとんどが船によって運ばれています。ここではそれらの食品がどんな経路で、どのようにして運ばれてくるのかをみてみましょう。
パンやめん類の原料になる食糧用小麦粉は57万トンで、そのうち56%以上がアメリカから輸入されています。収穫された小麦は、トラックなどで積み出し港のサイロ(穀物などを貯蔵する円筒形の背の高い倉庫)にいったん運び込まれた後、サイロ近くに接岸した、ばら積み船に積み込まれます。北アメリカ産の小麦は、多くがニューオーリンズ近くのメキシコ湾岸の港で積み込まれ、パナマ運河を通って太平洋に出て、日本へ向かいます。船は1ヶ月あまりの航海の後、日本の港に到着します。日本でもサイロのある穀物専用埠頭に接岸し、専用の荷役装置で小麦をいっきにサイロへ移していきます。そして、今度はサイロから製粉会社や食品会社などの工場に運ばれ、加工されてパンやめん類など、おなじみの食品に生まれ変わるのです。
えび、いか、まぐろなどの海産物、牛肉、豚肉などの食肉、グレープフルーツ、バナナなどの果物も輸入量の多い食品です。えびはインドネシアやタイ、牛肉はオーストラリアやアメリカ、グレープフルーツはアメリカが主な輸入先です。こうした生鮮食品は専用の冷蔵運搬船や冷凍運搬船、または冷凍コンテナや氷温コンテナで運ばれます。冷蔵運搬船は船倉内の温度をマイナス30℃~プラス15℃くらいに、冷凍運搬船はマイナス50℃以下の温度に保つことができます。たとえば、まぐろならマイナス50℃以下に、かんきつ類ならプラス10℃前後に保たれ、新鮮なまま日本へ運ばれてきます。

~ 住 ~
木材は住宅や家具から、はし、つまようじにいたるまで、日常生活にはなくてはならない原材料です。この木材も大半を海外からの輸入に頼っています。1960年代までは国内で生産される量だけで十分だったのですが、1980年代に入ると国内生産だけでは追いつかず、輸入木材が国産材を上回るようになりました。
日本に輸入される木材はアメリカ西海岸やカナダからの米材、ロシアのシベリア地域からの北洋材、東南アジア諸国からの南洋材などがあり、米材と北洋材、南洋材で3/4を占めています。輸入される木材は丸太のまま運ばれてくる場合と、すでに角材や板材に加工された製材として運ばれてくる場合がありますが、米材の約50%が製材のほかは、ほとんどが丸太のまま運ばれてきます。
丸太は木材専用船によって運ばれます。木材専用船は甲板上にも丸太を高く積み込めるよう、スタンションと呼ばれる金属の支柱で丸太をはさみ込むようにして押さえ、ロープやワイヤーで丸太を固定して運べるように工夫されています。
こうした木材のほか、紙の原料となるチップも船で運ばれてきます。チップは小さく切り刻まれた木片で、原木を製材する時に出る残りの部分などをカットしてつくります。木材の状態で運ぶより、この方が輸送効率が格段によいため、日本に輸入される製紙用木材のほとんどは、チップの状態で運ばれます。このチップを運ぶのがチップ専用船です。外観は穀物などを運ぶばら積み船とあまり変わりませんが、軽いチップをできるだけたくさん積めるよう、船倉がほかのばら積み船より、1.5倍程も大きくつくられています。甲板上に積み込み用のクレーンと、アンローダーと呼ぶ揚げ荷役専用の装置が備えられているのが特徴です。

~ エネルギー ~
日本は世界でも有数のエネルギー消費国ですが、国内で使われるエネルギー原料の99%を輸入に頼っています。なかでもエネルギー原料の中心となる石油は、ほぼ100%を海外に依存し、中でもアラブ首長国連邦、サウジアラビアなどの中東の国々に85%を依存しています。このほかインドネシア、中国などから輸入しています。これらの原油はオイルタンカーで運ばれてきます。中東からの原油はオイルタンカーに積まれ、インド洋から主としてマラッカ・シンガポール海峡を通り日本に運ばれてきます。
オイルタンカーは貨物船の中でもっとも大型のタイプです。日本の原油輸入に使われるもっとも代表的な大きさのVLCC(Very Large Crude Carrierの略で、20万重量トン以上の超大型タンカーのこと)と呼ばれるタンカーは、一度に東京ドームのおよそ25%にあたる量を運ぶことができます。
また、原油を精製してつくられるガソリン、灯油などの石油製品の輸入は、プロダクトタンカーと呼ばれる石油製品専用船で運ばれます。
石油のほかにはLNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)などのエネルギー源の利用もさかんです。なかでもLNGは二酸化炭素や窒素化合物の排出量が少なく、環境に優しいエネルギーとして注目されています。天然ガスを液化すると、体積はガスの状態の約1/600、サッカーボール4個をゴルフボール1個分に圧縮したのと同じになります。LNG輸送専用のLNG船は、ガスを液状で運ぶためマイナス162℃という超低温が保たれる船倉をもっています。船倉は巨大な魔法瓶のようで、さまざまなハイテク機能がほどこされています。