(公)日本海事広報協会のホームページです。「海の日」や海運・造船などの海事産業、マリンレジャーや海洋環境など海について幅広い広報活動をしています。



トップページ > データ集 > 海運 > 日本列島の大動脈内航海運 ~長距離大量輸送の王者/産業資材の90%を運ぶ/地球に優しい内航海運 モーダルシフト~
日本列島の大動脈内航海運  ~長距離大量輸送の王者/産業資材の90%を運ぶ/地球に優しい内航海運 モーダルシフト~
~ 長距離大量輸送の王者 ~
日本列島の沿岸部には京浜工業地帯などの臨海工業地帯が広がり、東京や大阪をはじめとした大都市が点在しています。こうした臨海工業地帯や消費地をひかえた国内の各港どうしを結んで、石油製品、鉄鋼、セメントなどの産業用資材や、くらしに欠かせない食料品や日用品、電気製品や自動車など、あらゆる物資を運んでいるのが日本の内航海運です。
日本国内の物資の輸送にはトラックや鉄道も利用されていますが、これらと内航海運を比べてみると、輸送トンキロ(輸送機関の輸送活動量を表す単位で輸送量・トンに輸送距離・キロメートルをかけたもの)ベースで全体の約39%が内航海運で運ばれ、長距離の大量輸送にもっとも適した輸送機関という結果が出ています。外航海運と比べても、内航海運の輸送量は外航海運の58%あまりに相当し、その規模は世界的にもあまり例がありません。
外航海運によって日本のおもな港へ運ばれ、また、輸出されるさまざまな物資や製品が、内航海運によって日本全国の港へとつながるのです。内航海運は、日本の産業と私たちのくらしを支える物流の大動脈といってよいでしょう。
このようにさまざまな貨物を大量に運ぶため、その船も、一般貨物船、オイルタンカー、自動車専用船、コンテナ船、LPGタンカーなど、外航海運に劣らないさまざまなタイプのものが就航しています。

~ 産業資材の90%を運ぶ ~
内航海運がもっとも真価を発揮するのは長距離大量輸送で、産業用のさまざまな原材料の輸送には欠かせません。輸送トンキロでみると、石炭、非金属鉱物、セメント、石油製品の分野で、国内輸送量全体の90%を運んでおり、鉄鋼を中心とした金属も75%と高い割合をしめています。
輸送される貨物のうち、鉄鋼製品の多くを運んでいるのは499総トン型と呼ばれる一般貨物船です。もともとはどんな貨物でも運べる船倉が平らな万能型なのですが、船型的に多品種少量輸送になりがちな鉄鋼製品の輸送に適しているため、鉄鋼輸送の中心的存在になっています。
自動車は自動車専用船によって運ばれます。国内の自動車メーカーの多くは工場で生産した自動車を消費地や輸出基地へ運ぶために、船を活用しています。自動車は容積の割には重量が軽く、船での大量輸送に適した貨物です。自動車運搬船の船内は何層ものデッキに仕切られ、600~700台の乗用車を積むことができます。自動車の積みおろしは、ランプウェイと呼ばれる船から岸壁に延ばされる橋を使って行なわれ、専門のドライバーが運転して行います。

日用品や食料品、家電製品などの雑貨類は、多くがコンテナ船やRORO船(ローロー船:Roll on Roll offを省略した呼び名。船体の前後などに大きな開口部があり、そこからランプウェイと呼ばれる橋を岸壁に延ばし、岸壁から直接船内へトラックやトレーラーなどが乗り入れ貨物を積みおろしする)で運ばれます。コンテナ船やRORO船は、船に積み込む前に貨物をまとめておくため、効率よい荷役ができ、雑貨類の輸送には最適です。
石油や穀物などの輸送も内航海運の活躍が目立つ分野です。外航貨物船で国内の中継基地に運ばれてきた大量の石油や穀物を、国内各地の製油所や工場、あるいは消費地に運んでいます。

~ 地球に優しい内航海運 モーダルシフト ~
日本の産業の中心が、鉄鋼など重工業から電子機器や精密機器などの産業へ移っていった1980年頃から、国内輸送の分野では、小口貨物(コンテナ1個やトラック1台分に満たない少量の貨物)の輸送量が増え始め、その多くがトラックで運ばれるようになりました。1990年から2000年までの10年間の輸送トンキロをみると、トラックの伸びが13%に対し、内航海運は変わらずでした。急激なトラック輸送の増加の結果、輸送に欠かせない道路や貨物を集配するターミナルなどの能力が限界に近づいてしまい、また、道路の渋滞や夜間走行が頻繁になったことによる騒音、排気ガスによる二酸化炭素排出量の増大などが問題になってきています。そこで、トラックで運ばれている貨物の一部を鉄道や、内航貨物船に振り向けて運ぼうというのが「モーダルシフト」と呼ばれるものです。
内航海運は少ない人数で一度に大量の貨物を運べる点や、騒音や大気汚染のような環境問題が少ない点で、トラックより優れた輸送機関として注目を集めています。内航海運の労働者1人あたりの年間輸送活動量はトラックの12倍、炭酸ガス排出量は営業用トラックの約1/5なのです。さらに、現在、国土交通省では電気推進システムをはじめとする新技術を採用したスーパーエコシップの開発を進めており、それが普及すれば運輸分野からの環境負荷の低減が図られ、モーダルシフトが進展すると期待されています。
モーダルシフトを推進するためには、モーダルシフトに適した港湾や、荷役設備、港と市街地を結ぶ道路の整備などが必要です。また、主として小口貨物を扱うことから、輸送時には送り主や受取人の異なるいくつもの貨物を、コンテナやトラックに混載して運ぶことになり、鉄道やトラックなど、他の交通機関との連携も重要です。このため、内航海運では業界内部や他の輸送機間との情報ネットワーク化の構築を進めています。また、独立行政法人鉄道建設・運輸施設支援機構の船舶共有建造制度等を利用したスーパーエコシップの普及推進も行われています。